
~発達の土台となる「力加減」の話~
前回の記事では、前庭覚についてお話ししました。
前庭覚が身体のバランスを感じ取り、安心感や「待つ力」の土台となる感覚だとしたら、今回お話しする固有受容覚は、「力加減」を知るための感覚です。
固有受容覚という言葉も、前庭覚と同じように聞き慣れないかもしれません。でも実は、この感覚も赤ちゃんの発達から大人の日常まで、私たちの人生に深く関わっています。
固有受容覚は「身体の位置や力加減」を知る感覚
固有受容覚とは、筋肉や関節、腱などから送られてくる感覚のことです。
例えば、
目を閉じていても鼻を触れる。
階段を上り下りできる。
コップを落とさずに持てる。
こうしたことができるのは、固有受容覚が働いているからです。
私たちは普段、無意識のうちに身体の位置や動きを感じ取りながら生活しています。
つまり固有受容覚は、「今、自分の身体がどこにあり、どれくらい力を使っているのか」を知るための感覚なのです。
赤ちゃんは身体を使いながら固有受容覚を育てている
赤ちゃんは生まれてから、
寝返りをする。
ハイハイをする。
よじ登る。
立ち上がる。
歩く。
そんな経験を繰り返しながら成長していきます。
その過程では、
どのくらい力を入れれば身体が動くのか。
どのくらい踏ん張れば転ばないのか。
どのくらい手を伸ばせば物が取れるのか。
そんなことを身体を通して学んでいます。
つまり赤ちゃんは、身体を動かしながら力加減を学んでいるのです。

「できた!」を感じる土台になっている
子どもの発達において、「できた!」という体験はとても大切です。
初めて寝返りができた。
初めて立てた。
初めて歩けた。
初めて自分で服を着られた。
そんな成功体験は、子どもの自信や意欲につながっていきます。
でも、その前提には、自分の身体を思い通りに動かせたという感覚があります。
身体を動かした結果と感覚が結びつくことで、「できた!」という実感が生まれるのです。
つまり固有受容覚は、単なる運動の感覚ではありません。
自己効力感や挑戦する力にも深く関わっています。
また、自分の身体を思い通りに動かす経験は、「どのくらい力を入れるか」だけでなく、「どこで止めるか」を学ぶことにもつながります。
こうした経験を積み重ねることで、自分の行動や感情をコントロールする力も育まれていくのです。
実は大人も「力加減」を学び続けている
これは子どもだけの話ではありません。
私たち大人もまた、日々の生活の中で力加減を使っています。
仕事。
家事。
育児。
人間関係。
どれくらい頑張るのか。
どこで休むのか。
どこまで引き受けるのか。
そんな判断にも、実は「力加減」が関わっています。
頑張りすぎる人ほど、力加減がわからなくなっていることがある
例えば、100の力で十分な場面なのに、いつも120の力を出してしまう人がいます。
頼ればいいのに頼れない。
休めばいいのに休めない。
任せればいいのに自分でやってしまう。
気づけば、いつも全力。
そんな状態です。
もちろん、それは責任感や優しさでもあります。
でも、その状態が続くと疲れてしまいます。
そして厄介なのは、本人に頑張りすぎている自覚がないことも少なくないということです。
なぜなら、自分がどれくらい力を使っているのかを感じ取れていないからです。
力加減がわかると、自分の状態もわかる
前回の記事では、感覚入力は自分の状態を知るためのものだというお話をしました。
固有受容覚も同じです。
今どれくらい頑張っているのか。
無理をしていないか。
疲れていないか。
そうしたことを知るためにも、身体からの感覚は大切な情報になります。
力加減がわかるようになると、
頑張りすぎる前に休める。
抱え込みすぎる前に頼れる。
無理をする前に立ち止まれる。
そんな選択ができるようになります。

子どもの発達を支えるために、まずは大人も力加減を知る
REALBODYでは、子どもの発達を支えるためには、大人自身の発達も大切だと考えています。
子どもを見守ること。
待つこと。
信じること。
それらは前回お話しした前庭覚とも関係しています。
そして、そのためにはもう一つ、
「力加減を知ること」も必要です。
頑張りすぎない。
抱え込みすぎない。
必要なときには頼る。
そんな選択ができることも、子どもの発達を支える土台になります。
固有受容覚は、その土台を支える感覚のひとつなのです。
次回は「触覚」について
前庭覚が安心感の土台。
固有受容覚が力加減の土台。
だとしたら、触覚は人とのつながりや自己受容にも深く関わる感覚です。
「なんだか落ち着かない」
「人との距離感が難しい」
そんなこととも関係しているかもしれません。
次回は、触覚について詳しくお話ししていきます。