~「私はここにいる」を感じる感覚の話~

前回は、固有受容覚についてお話ししました。固有受容覚が「力加減を知る感覚」だとしたら、今回お話しする触覚は、「自分と外の世界を区別する感覚」です。
私たちは普段、触覚というと
「触る」
「触れられる」
というイメージを持つかもしれません。
でも実は触覚は、人が自分という存在を認識するために欠かせない感覚でもあります。
今回は、そんな触覚についてお話ししていきます。
触覚は胎児期から育ちはじめる
触覚は、人間の感覚の中でも非常に早い時期から発達します。妊娠8週ごろには口の周辺に触覚受容体が形成され、妊娠16〜20週ごろには触覚が機能し始めるといわれています。
お腹の中の赤ちゃんは、
羊水に包まれ、
子宮壁に触れ、
自分の身体に触れながら過ごしています。
その経験を通して、「自分の身体」と「自分以外」を少しずつ学んでいきます。
実は、人が最初に出会う世界は、触覚の世界なのです。
触覚は「ここまでが自分」を教えてくれる
赤ちゃんは生まれたばかりの頃、自分の身体と外の世界の区別がまだはっきりしていません。
実は、自分の手が自分の手であることもわかっていないのです。
だから赤ちゃんは、
手を見つめたり、
手をしゃぶったり、
足を触ったり、
足を口に入れたりします。
これは遊んでいるだけではありません。
「これは何だろう?」と、自分の身体を確認しているのです。

特に口の中は、身体の中でも非常に感覚が敏感な場所です。
赤ちゃんは、手で感じる感覚と口の中で感じる感覚を照らし合わせながら、「これは自分の手なんだ」ということを少しずつ学んでいきます。こうした経験を繰り返すことで、「ここまでが自分」という身体の境界線が育まれていくのです。
つまり触覚は、自分と外の世界を区別し、自分という存在を認識するための感覚でもあるのです。
抱っこやスキンシップが安心につながる理由
生まれた後、赤ちゃんは抱っこや授乳、肌と肌の触れ合いを通して育っていきます。
抱っこされる。
なでてもらう。
手を握ってもらう。
そうした触れ合いを通して、
安心する。
落ち着く。
ホッとする。
という感覚を経験していきます。
だから触覚は、単に身体を感じるためだけの感覚ではありません。安心感や情緒の安定にも深く関わっています。
触覚による心地よい刺激は、
「私はここにいていい」
「私は受け入れられている」
という感覚にもつながっていくのです。
実はママも触覚を育てている
抱っこや授乳、スキンシップというと、赤ちゃんのためのものだと思われがちです。でも実は、その時間は赤ちゃんだけのものではありません。
赤ちゃんを抱っこする。
小さな手を握る。
ほっぺに触れる。
寝顔をなでる。
そんな触れ合いは、ママ自身の触覚にも刺激を与えています。
触覚は、人とのつながりや安心感と深く関わる感覚です。
だから赤ちゃんとの触れ合いは、赤ちゃんが安心するだけでなく、ママ自身の心や身体を落ち着かせることにもつながります。
赤ちゃんがママに抱っこされることで安心するように、
ママ自身も赤ちゃんとの触れ合いを通して安心感を受け取っています。
触覚は、一方通行の感覚ではありません。
与える側も、受け取る側も、同時に満たされる感覚なのです。

子どもの発達を支えるために、まずは自分を感じる
REALBODYでは、子どもの発達を支えるためには、大人自身も発達し続けることが大切だと考えています。
触覚は、その入り口になる感覚のひとつです。
自分の身体に触れる。
身体の感覚を感じる。
今の自分の状態を知る。
それは、自分自身とつながることでもあります。
子どもは触覚を通して、
自分という存在を感じ、
安心感を育み、
世界とのつながりを学んでいきます。
そして大人もまた、触覚を通して自分自身を感じることができます。
触覚は、赤ちゃんだけに必要な感覚ではありません。
大人になった今でも、自分を感じ、安心感を育み、人とのつながりを深めるために大切な感覚なのです。
触覚・前庭覚・固有受容覚はつながっている
ここまで、
・前庭覚
・固有受容覚、
・触覚
についてお話ししてきました。
これらの感覚は別々に働いているわけではありません。
お互いに影響し合いながら、
自分という存在を感じること。
安心感や安定感を育むこと。
そして、子どもの発達を支えていくこと。
につながっています。
胎児期から育まれるこれらの感覚は、子どもだけでなく大人にとっても、生きていく土台となる大切な感覚なのです。