
「最近、ちゃんと息を吸えていない気がする」
「深呼吸しようとしても、苦しい」
「気づくと息を止めている」
産後、このような感覚を感じるママは少なくありません。
でもそれは、産後の身体にとって、自然な反応でもあります。
呼吸が浅くなるのは、身体なりに理由があるからです。
私たちは1日に約2万回、無意識に呼吸を繰り返しています。
それほど呼吸は、身体にとって当たり前で「生きること」と深く結びついている活動です。
だからこそ呼吸には、今の身体の状態が、そのまま現れます。
疲れている時。
緊張している時。
気を張っている時。
呼吸は自然と変わっていきます。
呼吸は「肺」だけでしているわけではない
呼吸というと、肺が膨らんだり縮んだりするイメージを持つ方も多いかもしれません。
でも実際には、呼吸には全身が関わっています。
息を吸う時、
肋骨は少し広がり、
胸とお腹の間にある「横隔膜」が下へ動き、肺に空気が入ります。
反対に息を吐く時には、
横隔膜が戻りながら、
肋骨も閉じていきます。
本来の呼吸は、
胸やお腹の内側が、
やわらかく動いている状態です。
だからこそ、この動きが制限される”妊娠中”は、呼吸も変わっていきます。

産後は、呼吸に関わる場所が固まりやすい
妊娠は、私たちの呼吸にどのような影響を与えるのでしょうか。
妊娠すると、ホルモンの影響によって、身体を支えている靭帯は少しずつ緩み始めます。
すると身体は、これまでと同じように支えることが難しくなり、筋肉がいつも以上に頑張らなくてはならなくなります。
この状態が続くと、頑張りすぎの筋肉は固くなり、しなやかに動くことが難しくなってしまいます。
さらにお腹も大きくなることで、
内臓は背中のほうへ追いやられ、
横隔膜は押し上げられます。
この頃から、呼吸のしづらさを感じやすくなっていきます。
さらに産後は、
・授乳姿勢
・抱っこ姿勢
・睡眠不足
・長時間同じ姿勢でいること
などが続き、胸やお腹まわりが固まりやすくなります。
すると、
肋骨の動きが小さくなり、
横隔膜も動きづらくなります。
「呼吸が浅い」というより、
“身体の内側が動きづらくなっている”状態に近いのです。
そして、呼吸の動きが小さくなると、身体を支える力にも影響が出やすくなります。
呼吸と「支える力」はつながっている
横隔膜は、呼吸だけをしている筋肉ではありません。
実は、
お腹を包むようについている「腹横筋」、
骨盤の底にある「骨盤底筋群」、
背骨を支える「多裂筋」とも連動しています。
これらは、身体を内側から支える“コア”の一部です。

私たちは動こうとする時、最初にこの深い部分が働くことで、骨盤や背骨を安定させています。
つまり呼吸は、「空気を入れ替えるため」だけではなく、“身体を支えるため”にも使われているのです。
だから呼吸が浅くなると、胸だけで呼吸しやすくなります。
すると、本来一緒に働いているお腹の深い筋肉たちも、使いづらくなっていきます。
呼吸が浅いと「力が抜けない身体」になりやすい
身体を内側から支える力がうまく働かなくなると、
・抱っこがつらい
・肩や腰が常に痛い
・立っているだけで疲れる
・身体が重だるい
そんな感覚にもつながりやすくなります。
すると身体は、その不安定さを補うように、外側の筋肉で頑張って支えようとします。
肩に力が入る。
みぞおちが固くなる。
歯を食いしばる。
気づけば、呼吸まで力んでしまう。
産後、「ずっと休まらない感じがする」のは、こうした身体の反応が重なっていることも少なくありません。
「呼吸を整える」とは、無理に深呼吸することではない
呼吸を整えるというと、
「大きく吸う」
「ゆっくり吐く」
ことをイメージする方も多いかもしれません。
でも、身体が緊張している時に、無理に呼吸を変えようとすると、かえって力みが強くなることがあります。
大切なのは、まず“呼吸しやすい身体”を取り戻していくこと。
固まっていた胸まわりが少し動く。
吐く時に力が抜ける。
お腹がやわらかく動く。
そうやって身体が変わっていくと、呼吸も少しずつ変わっていきます。
呼吸は、「安心できる身体」を取り戻す入り口
呼吸は、身体と神経の状態を映しています。
だからこそ、呼吸を整えるということは、単に呼吸法を頑張ることではなく、“身体が安心して動ける状態”を取り戻していくこと。
呼吸が変わると、
抱っこの力みが抜けやすくなったり、
身体の重さが軽く感じたり、
少し休まりやすくなったりすることがあります。
産後ケアは、元に戻すためのものではありません。
変化した身体を、もう一度支え直していくこと。
呼吸は、その土台を整えていくための、大切な入り口のひとつです。