子どもは無限の可能性を秘めています。その可能性を開花させるための第一歩は、家庭でどれだけ子どもの個性を尊重し、伸ばしていける環境を整えられるかにかかっています。家庭教育は、学校教育や習い事と並んで、子どもの成長において最も重要な土台です。
子どもたちが持つ「自分を育てる力」
子どもの才能や個性は、外から見ただけではわかりません。そのため、我が子にはどんな才能があるのか、どんな個性があるのか、そしてその才能や個性を活かしてあげるために親である私たちにできることは何だろうと考え、模索し、『子どものため』を最優先に日々子育てに奮闘しているご家庭は多いと思います。しかし、子どものためにと思ってやってあげていたことが、実は子どもたちの「自ら発育する力」「自ら発達する力」を阻害することになってしまっていたということがよくあります。子どものためと思ってやってきたことが裏目に出てしまったケースの一つとしてあげられるのが、思春期を迎える年代の子どもたちに「反抗期」がみられないことです。
え?反抗期なんてない方がよくない?
そう感じる方も多いのではないかと思いますが、子どもたちにとって反抗期とは自立の一歩を踏み出したサインとなります。つまり、反抗期を迎えることができた子どもは親の価値観ではない自分自身の価値観を持つことができたということです。たとえ、子どもが親と同じような生き方をしたいと考えていたとしても、一心同体ではないし、一卵性双生児でもないので、自分なりの価値観は育まれます。そして、その自分自身の価値観を手に入れることが、自分の持って生まれた才能や個性を活かしながら自分らしく生きていくための最大のカギとなります。
では、子どもたちはどのように自分の価値観を育んでいくのか。ここでは価値観を「自分がどっちの方向に進んだら幸せかを判断する基準=自分の人生の羅針盤」と定義します。この羅針盤は、過去の経験や体験に基づいて形成されますが、どんな経験や体験をしたかということよりも、その経験を通して何を感じたのか、その体験を通して何を考えたかが重要で、その感じたことや考えたことによって羅針盤の磁気が定まっていきます。
しかし、まだ経験や体験が少ないうちは方向性が定まらないため、親が持つ羅針盤を目印に経験や体験を積み重ねていくのが、思春期前までの期間になります。
才能を育む環境の作り方:親は子どもと一緒に成長するパートナー
どの才能の種が発芽するのか、どの個性が際立つのかは環境によって大きく変わります。子どもたちは最初、親の羅針盤を目印に経験や体験を積み重ねますから、子どもにたくさん経験させてあげよう!いろんな体験をさせてあげよう!と「してあげたい気持ち」が高まる方もいらっしゃるでしょう。しかし、私たち親が持つ羅針盤は子どもたちにとってあくまでも“目印”です。子どもたちが才能や個性を自ら育むためには、子どもが安心して自分を表現できる環境が必要です。そのために必要な親のあり方は、「教える」ではなく「見守る」スタンスでいることです。子どもの発見や挑戦を見守り、必要なときにサポートすることで、親子ともに成長する関係性を築けます。
親自身も「学び続ける姿勢」を持つことが、子どもの模範となります。たとえば、親が新しい趣味に挑戦する姿を見せるだけで、子どもは自然と「挑戦することの楽しさ」を学びます。すると自ら進んで経験や体験を積み重ね、そこから感じ、思考することで、己の価値観を確立し、自らの才能や個性を発揮できるようになるでしょう。
才能や個性の先にある調和
家庭で育まれた才能や個性は、やがて社会で調和を生む力となります。子どもが自分の個性に自信を持ち、他者の個性を尊重できるようになれば、その先には新しい可能性が広がります。
家庭は、子どもの才能という「種」を育てる畑です。その畑を豊かに保つことで、未来の社会全体が彩り豊かに成長していくでしょう。