株式会社REAL BODY

マミーブレインって何?

物忘れが増えるのは、脳がダメージを受けたから?

「何を取りに来たんだっけ?」

キッチンに来たはいいが目的を忘れる。
スマホをどこに置いたかわからない。
さっき聞いた話なのに思い出せない。

産後のママから、そんな声を聞くことがあります。

最近では、このような状態を「マミーブレイン」と呼ぶことも増えてきました。


SNSでは、
「妊娠すると脳が7%縮む」
という情報が話題になることもあり、

「脳がダメージを受けたの?」
「記憶力が落ちたってこと?」
「元に戻らないの?」
と不安になる方もいるかもしれません。

でも実は、研究でわかってきたことは、私たちが想像しているものとは少し違います。

「脳が縮む」は本当。でも、それは脳のダメージではない

2017年に発表された研究では、妊娠前と出産後の脳をMRIで比較したところ、一部の灰白質と呼ばれる領域の体積が減少することが報告されました。

灰白質とは、脳の中で情報処理を行う重要な部分です。

そのため、

「灰白質が減る」

「脳の機能が低下する」

と考えてしまいがちです。

実際、SNSなどでは

「妊娠で脳が縮む」
「産後は脳が弱くなる」

という発信も見かけます。

でも、この研究の研究者たちは、そのようには解釈していません。

むしろ、母親になるための脳の適応として捉えています。

変化していたのは、赤ちゃんとの関わりに大切な領域

研究で変化が見られたのは、主に

・社会認知
・他者理解
・共感
・母子愛着

に関わる領域でした。

簡単に言うと、
「赤ちゃんの状態を感じ取ること」
に関係する場所です。

赤ちゃんは言葉で伝えることができません。

お腹が空いたのか。
眠いのか。
不快なのか。
安心しているのか。

ママは、泣き方や表情、身体の動きなど、たくさんの情報を読み取りながら関わっています。

つまり脳は、赤ちゃんを守り育てるために必要な情報処理がしやすい状態へと変化している可能性があるのです。

脳が減るというより、脳が再編成される

2024年には、妊娠前から産後まで脳を継続的に追跡した研究も発表されました。
その研究では、妊娠中に脳のさまざまな変化が起きることが確認されています。

しかし研究者たちは、
「脳が壊れている」
とは考えていません。

むしろ、思春期に起きる脳の変化と似ていると説明しています。

子どもの脳も成長の過程で、
よく使う神経回路を強化し、
あまり使わない回路を整理していきます。

これを「シナプスの刈り込み」と呼びます。
妊娠・出産期の脳も、それに近い変化が起きている可能性があるのです。

つまり、脳がダメになっているのではなく、赤ちゃんを育てるために必要な情報を、より効率よく処理できるよう調整している途中とも考えられます。

じゃあ、なぜ物忘れが増えるの?

ここで気になるのが、
「じゃあ、なんであんなに忘れるの?」ということ。

もちろん産後は、

・睡眠不足
・ホルモン変化
・疲労の蓄積

もあります。

でも、それだけでは説明しきれない部分もあります。


もし脳が赤ちゃんを守ることを優先する状態になっているとしたら、

赤ちゃんの泣き声。
呼吸。
表情。
体調の変化。
危険の察知。

こうした情報に対する優先順位は高くなります。

一方で、

スーパーで買う予定だったもの。
さっき置いたスマホ。
自分の予定。

などの日常を回すための情報は後回しになりやすいのかもしれません。

つまり、
能力が落ちたというより、

脳の優先順位が変わった状態

と考える方が自然です。

REALBODYが大切だと思うこと

マミーブレインについて調べると、
「物忘れ」
「集中力低下」
という言葉がたくさん出てきます。

でも私たちが本当に気になるのは、そこだけではありません。

産後のママを見ていると、
「疲れていることに気づかない」
「呼吸が浅くなっていることに気づかない」
「身体に力が入り続けていることに気づかない」
そんな状態になっていることが少なくありません。

前回の記事でもお伝えしたように、私たちには本来、
「疲れた」
「お腹が空いた」
「休みたい」
といった身体の内側の状態を感じ取る力があります。

しかし産後は、赤ちゃんを優先する脳や神経の変化によって、自分の感覚が後回しになりやすい時期でもあります。

だからこそ大切なのは、赤ちゃんを見ることと同じくらい、

自分の呼吸を見ること。
自分の疲労に気づくこと。
自分の身体の声を聞くこと。

マミーブレインは、脳が壊れたサインではありません。

母親になるために脳が変化している途中だからこそ、ときどき立ち止まって、自分自身の状態にも目を向けてあげてください。

それが結果的に、ママ自身の回復にも、赤ちゃんとの心地よい時間にもつながっていくはずです。


※本記事は公開されている研究論文および医学情報を参考に、REALBODYの視点から解説しています。

【参考文献】

Hoekzema E, et al. (2017)
Pregnancy leads to long-lasting changes in human brain structure.
Nature Neuroscience, 20(2), 287–296.

Pritschet L, et al. (2024)
Neuroanatomical changes observed over the course of a human pregnancy.
Nature Neuroscience.

National Institutes of Health (2024)
Brain changes observed during pregnancy.

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